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橋杭岩

【はしぐいいわ】

橋杭岩はその奇観から南紀でも屈指の景勝地とされ、国の名勝天然記念物に指定されている。地質学的には、狭い泥岩地層にマグマが入り込んで冷え固まって隆起、波の浸食によって泥岩が削られてマグマが固まった流紋岩だけが残ったものとされる。約40個の巨石が紀伊大島に向かって真っ直ぐに約800m程並ぶ姿は圧巻であり、この不思議な光景が成り立つ伝説が残されたのは、ある意味必然である。

ある時、弘法大師は天邪鬼を連れにして南紀一帯を巡錫していた。串本の浜に来たところ、対岸にある大島の人々が舟で浜に来るのに難儀しているとの話を聞き、ならば夜のうちにこっそりと橋を架けてしまおうと思い立った。

そこで連れの天邪鬼にも手伝わせたが、法力で次々と巨石を切り出して海に突き刺していく大師には全く歯が立たず、天邪鬼は早々に力尽きてしまう。それを尻目に大師は難なく作業を進める。それを見ているうちに、天邪鬼は生来の悪戯心がむくむくともたげてきて、邪魔をしてやろうと思いついた。「一晩で橋を造ろう」と大師が言っていたのを思い出すと、闇に紛れて少し離れた場所へ行き、天邪鬼は鶏の鳴き真似をした。

順調に作業を進めていた大師は、あまりに早い一番鶏に驚いた。しかし周囲を見てまだ夜が明けていないと判断したのか、大師はまた作業を再開しようとした。それを見た天邪鬼は慌ててもう一度鶏の鳴き真似をした。大師も二度目の鶏の声に「もう夜が明けるのか」と作業を止めると、島まで半分程並んだ杭状になった巨石をそのままにしてこの地を去ったのである。

アクセス:和歌山県東牟婁郡串本町鬮野川

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