【はくとじんじゃ】
『因幡の白うさぎ』の話と言えば、神話に興味のない人でも一度は聞いたことのあるポピュラーな伝説である。
ひょんなことから沖の島にながされた兎は、鰐(=鮫)をだまして岸にたどり着こうとしたが、計略がばれて皮を剥かれてしまう。そこへ大勢の神様がやってきて、元の姿になるには海の水に浸かった後で吹きさらしの場所で風に当たると良いと教えられる。しかしそれは逆効果で、さらにひどい状態なったところで、荷物を担いだ一人の神様に出会う。その神様は、池の水に浸かった後で蒲の穂を全身にまぶして横になっていれば良いと教えた。そして兎はその教えを実行し、元の姿となった。その正しいことを教えてくれた神様は後の大国主命であり、兎の予言通り、この直後に八上姫と結婚することとなったという。
この伝説の舞台として現存するのが、白兎海岸であり、そのすぐそばにある白兎神社である。伝説では、かなり頭が悪くて悲惨な目に遭う兎であるが、大国主命が八上姫と結婚すると予言したから、縁結びの神として祀られている(また皮膚病の神とも)。
この境内には、実際に兎が身体を洗ったという池が存在する。どのような気象条件であっても水位が変化しないことから“不増不減の池”と呼ばれている。
この神社の一番の見どころは、本殿の台座である。この神社の本殿を支える台座には菊の文様が施されている。菊の紋章と言えば、言わずと知れた天皇家の御紋である。花びらの枚数こそ違うが(ここの台座は28弁、天皇家は16弁である)、全国的に見ても、菊の紋章を台座に使用している神社(多分他の建造物も含めて)はないと言ってもいいだろう。それゆえ、神話伝説と相まって、この神社が天皇家と何らかの関連があるのではないという憶測が出てくるわけである。
<用語解説>
◆八上姫
因幡の八上の郷(現・鳥取市河原町)にあった姫。その美しさを聞いた八十神(大国主命の異母兄弟達)が求婚するが断られ、大国主命の求婚を受け入れる。子供をもうけて出雲へ伴って行くが、正妻の須世理姫の嫉妬にあって、因幡へ帰国する。最後は八上の郷で没する。地元の売沼神社に祀られている。
アクセス:鳥取県鳥取市白兎