【おののこまちすがたみのいど】
岡山にある小野小町伝承では、小町は備中国都窪郡清音村(現・総社市)の守護であった小野常澄の娘とされる。その美貌故に都に上って宮仕えをしていたが、ある時、悪性の瘡に罹ってしまった。一向に治らないために郷里に戻り、同族の小野春道の許に赴き、日間山法輪寺の薬師如来に願掛けをした。そして毎日寺の裏山にある井戸に自分の顔を映していたという。7日目になって、天の声を聞いた小町が井戸に顔を映すと、瘡はすっかり取れて全快していた。その後、小町は里に残り尼となって余生を過ごしたといわれる。
現在、法輪寺の裏手に、小公園のような形で井戸は整備されている。実際は、井戸というよりも、湧水のある小さな泉という感じである。
<用語解説>
◆小野小町
生没年不明。平安時代初期に実在したとされるが、出身地も含めて謎に満ちている。六歌仙の一人、また絶世の美女として数多くの伝説を残す。
◆小野常澄・小野春道
常澄は小野小町の父親として名前が挙がるが、その出自に関しては不明。また春道についても、歌舞伎十八番の『毛抜』に登場するが、小野小町の三代目という設定になっており、歴史的には不明な点が多い。
アクセス:岡山県倉敷市二日市