【あまがふち】
高天原の混乱に陥れた素戔嗚尊は地上に追放された。降り立ったのは、出雲国の斐伊川の上流であったという。そして上流から流れてきた箸を見つけて人がいることを知ると、さらに上流へ向かった。そこで出会ったのが、さめざめと泣く足名椎・手名椎の老夫婦と、末娘の奇稲田姫。素戔嗚尊が訳を尋ねると、八岐大蛇という怪物が生け贄を求めてきたため、今まで7人の娘を差し出し、いよいよ最後に残った娘を捧げなければならないという。それを聞くと、怪物を退治して娘を嫁にもらおうと申し出た。そして素戔嗚尊は策を講じて八岐大蛇を退治し、奇稲田姫を妻に迎えたのである。
有名な八岐大蛇伝説であるが、この怪物が住処としたのが、斐伊川にある天が淵である。現在では国道314号線が川に沿って通じており、天が淵のある場所はちょうど小公園のようになって整備されている(国道から階段を使って淵近くまで下りることが出来る)。
<用語解説>
◆八岐大蛇
8つの頭と8つの尾を持つ怪物。『日本書紀』では“八岐大蛇”と書かれているため蛇の怪物と解釈されているが、実際ははっきりしない。その容姿から支流を持つ川の象徴と考えられ、素戔嗚尊による退治を川の治水と捉える説がよく取り上げられる(助けたのが奇稲田姫であり、“稲”=農耕地を川の氾濫から守ったという発想である)。またその尾から“天叢雲剣”を取り出したとあるため、中国山地に勢力を持った製鉄集団と関わりのある存在という説もある。
アクセス:島根県雲南市木次町湯村