【せいめいづか】
伝承によると、稀代の陰陽師・安倍晴明がこの地に立ち寄った際、村人がたびたびの津波の被害を訴えたため、小豆色の石を集めて塚のようなものを造り、祈祷をおこなって津波防止を祈願したという。それからこの村では津波などの天災の被害を受けることがなくなったとされ、人々は造られた塚を祀り、“晴明塚”と呼んで大切に守ってきたのである。
その後、この晴明塚は地元の人々によって大いに信仰され、津波除けだけではなく、この塚に祈願すれば疫病も治るという信仰が広まった。具体的には、塚に祈願した後に小豆色の石を1個持ち帰り、その後に息災であったお礼参りの際に借り受けた石と共にもう1個の石を塚に戻すという習わしが出来た。しかもその自分たちが塚に納めた石はどんな色であろうと、一夜で小豆色に変わると言われている。
“遠州七不思議”の1つに数えられる塚であり、未だに信仰は語り継がれており、この塚がある限りこの地は津波に襲われることがないと信じる者も少なくないという。
<用語解説>
◆安倍晴明
921-1005。従四位下播磨守。陰陽道を極め、時の天皇や摂関家より信任が厚かった。その超人的な術については『今昔物語集』をはじめとして、数多く伝承されている。また東海から関東地方にかけても安倍晴明が来訪して呪術を以て土地の者を災いから救ったという伝説が複数残されているが、実際に東国へ赴いたとの史実は確認できない。
◆遠州七不思議
「七不思議」であるが、実際には10以上の不思議が紹介されている。晴明塚の他には、小夜の中山夜泣き石、桜が池のおひつ納め、波小僧、京丸牡丹、無間の鐘、三度栗、池の平の幻の池、霧吹き井戸、子生まれ石、能満寺のソテツ、片葉の葦、天狗の火などが挙げられる。
アクセス:静岡県掛川市大渕