鬼鎮神社

【きちんじんじゃ】

全国的にも珍しい、鬼が祭神として祀られている神社である。節分の際には「福は内、鬼は内、悪魔外」と掛け声をして豆をまく。鬼は内と言うのは、他の寺社から追い払われた鬼がここにやって来られるようにするためとも言われ、また悪魔とは参拝者に取り憑いた魔のことであり、これだけをうち払うのだという。また武運長久にご利益があり、それが叶うと金棒を奉納する伝統がある。鬼を非常に意識した神社であることは間違いない。

この神社の創建は寿永元年(1182年)、畠山重忠の菅谷館の鬼門に当たる場所に厄除けとして設けられたのが始まりである。鬼門封じに建てられた神社であるから、創建当初から鬼と関わりがある。さらに地元では「鬼鎮様」と呼ばれる伝説も残されている。

ある刀鍛冶の元に若者が弟子入りした。そして大いに働きだし、ある時、親方の娘を嫁に欲しいと言ってきた。鍛冶屋は「1日に刀を100本打てたら嫁にやろう」と約束する。すると若者は一心不乱に刀を打ち始めた。その勢いは凄まじく、親方は気になって様子を覗いた。すると若者の姿はいつしか変じて鬼となっていたのである。おののいた親方は、無理やり鶏を啼かして夜が明けたことにして、作業を中断させた。そして夜が本当に明けた頃に仕事場に行くと、最後の1本を作るところで若者は槌を握ったまま死んでいた。哀れに思った親方は「鬼鎮様」として宮を建てて祀ったという。

<用語解説>
◆畠山重忠
1164-1205。鎌倉幕府成立期の有力御家人の一人。その言動から“板東武者の鑑”と評され、後世にまで伝えられる。武蔵地方一帯を領有し、菅谷館は畠山氏の本拠地とされる。

アクセス:埼玉県比企郡嵐山町川島